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大学スポーツの現在と未来

スポーツマーケティングの専門家が語る

大阪体育大学においてスポーツマーケティングを研究する傍ら、日本大学スポーツ協会(UNIVAS)と大学スポーツコンソーシアムKANSAI(KCAA)の理事を務められている藤本淳也教授。

大学スポーツの価値やラクロス文化について語っていただいた。

 

プロフィール


本 淳也 (ふじもと じゅんや)

大阪教育大学教授。専門はスポーツマーケティング。

UNIVASと大学スポーツコンソーシアムKANSAI(KCAA)の理事を務め、大学スポーツの発展と研究にも関わっている。

著書には「スポーツマーケティング」(共著、大修館書店)などがある。

 

 

大学スポーツの価値を創造していく。4年間、スポーツに打ち込むことで得られるものとは。


はじめに、先生が理事を務めている「UNIVAS」について教えてください。

UNIVASは、学生アスリートが在学中に安全・安心の環境の下で学生自身の未来につながる活動と活躍ができる仕組みづくりに取り組んでいます。

UNIVASが目指しているのは、「大学スポーツの価値創造・向上」です。社会、ビジネス界、スポーツ界が変化を続ける中で、大学スポーツ界が直面する課題解決と未来のあるべき姿を追求しながら、組織的に事業を展開しています。

 

時代の変化と共に大学スポーツの価値も変化すると思うのですが、今後大学スポーツの価値はどのように変化していくとお考えですか?

大学スポーツの価値は、学生自身が、各運動部が、各競技団体が、各大学が、UNIVASが、そしてスポーツ庁が「高めていく」そして「創造していく」というステージに入っています。

全国的な組織であるUNIVAS以外にも、地域や大学内で大学スポーツの価値の創造と向上を目指す取り組みは始まっています。大きなチャレンジですが、その動きは加速していくと期待しています。

 

大学生がスポーツをすることで得られるものとは何でしょう?

一般的には、コミュニケーション力、社会人基礎力、生きる力などが大学でのスポーツ経験を通して身に着くといわれています。これは事実だと思います。一生残るものとして得られる最も重要なものは「仲間」です。同級生や先輩後輩、応援してくれた家族・友人、ライバル大学の選手などです。

4年間、スポーツに共に打ち込み、成長し、喜び、悲しみ、楽しさ、苦しさを共有した仲間、それを支えて応援してくれた仲間、自分を成長させて敬ってくれたライバル、これこそが一生残る財産です。この財産が、卒業後の長い人生の糧となり、支えとなり、自身の歩みを肯定してくれます。

 

「新しいスポーツ」であるが故のラクロスの文化


藤本先生から見て、ラクロスにはどういった文化があると思いますか?

私なりにわかっているのは、日本のラクロスがとてもチャレンジングであるということです。この「チャレンジ文化」は、大学で新しいスポーツにチャレンジしたラクロスプレーヤーが、卒業後にそのマインドを活かして社会で活躍してきたことで培われてきたものでしょう。

「ラクロス経験者は就活に強い」というのもそのひとつで、OBOGの活躍が注目され、文字化され、その認識が広がったことで、現役学生プレーヤーを象徴する表現となっています。

35年間の日本ラクロスの歴史の中で、ラクロス経験者が培い、現役学生が継承することで選手、組織、OBOGを中心に「チャレンジ」が「文化」として培われているのではないでしょうか。

 

ラクロス出身者は繋がりが強いと言われているのは、ラクロスが「新しいスポーツ」であることが最も大きいと思います。この意味は2つあります。

1つは、日本のラクロスは1980年代に持ち込まれた「新しい種目」ということです。日本での歴史は35年ほどでしかありません。

もう1つは、大学生にとって「新しいチャレンジ」であることです。協会登録選手の約9割は大学生で、大学入学後に競技を始めています。大学で出会って、魅了されて、4年という短いスパンで初心者からアスリートへ一気に駆け上がるスポーツの1つです。

 

「新しいスポーツ」であることが、なぜ繋がりを強めることになるのでしょうか?

スポーツマーケティング研究では、人々があるスポーツやチームのファンになるプロセスを心理的連続モデル(PCM:psychological continuum model)で説明することがあります。

PCMには認知(awareness)、 魅力(attraction)、 愛着(attachment)、 忠誠(allegiance)の4つのステージがあります。一般に、認知・魅力を経て愛着・忠誠のステージに入った人は、そのスポーツを支えようとする意識が強くなります。

大学入学時にラクロスに出会った人は、初心者から熟練者への成長と連動してPCMの4つのステージを4年間の短いスパンで一気に駆け上がっていきます。幼少期や少年期に出会うことの多い伝統的なスポーツ種目と比べて、とても短い期間ですね。

短期間に上り詰めた経験が「忠誠心」を強く意識して、支える行動にもつながっているのではないでしょうか。

加えて、現在の協会の活動がそのコミュニティ・アイデンティティを刺激しているともいます。協会は、ラクロス経験者に向けてさまざまな仕掛けを展開し、ラクロス選手時代を想起させ、卒業後もラクロス情報に触れ、そして支える機会の創出へのチャレンジを続けています。

これらの活動がラクロス経験者の「コミュニティ・アイデンティティ」を高レベルに維持する刺激となっているのだと考えられます。

 

どの競技団体も高校や大学の卒業と共に競技を離れた人たちを「ファン」として維持・獲得することに苦労しています。

ラクロスには、これからも注目していきます!

 

 


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